皆さんも一度は耳にしたことがある「電気自動車」すなわち電気で動く車、なんていい響きでしょう。エコを体現したかのような名前ですが、「欧州では失敗した」「全然エコじゃない」様々な声が聞こえてきますが、日本政府は2035年に乗用車の新車販売で電動自動車100%を目指しています。
実際のところはどうなのでしょうか?
結論から言うと課題が多く、現状のままでは非常に困難です。
なぜこのような結論になるかを電気自動車の仕組みから解説していきたいと思います。
ガソリン車との違い
ガソリン車と電気自動車の違いは何なのでしょうか?
以下の図で簡単に説明します。
| 違い | 電気自動車 | ガソリン車 |
| エネルギー源 | 電気 | ガソリン |
| 動力装置 | モーター | エンジン |
| エネルギー充填 | 充電 | 給油 |
| 排出物(走行中) | なし | 排気ガス |
これだけ見ると電気自動車というものは素晴らしい!なぜ電気自動車に否定的な人がいるのか?そんな風に思ってしまうと思いますが、この図は走行中に限ったことであり、車は走るまでに燃料が必要でその燃料はどのように作られているのでしょうか?
車の燃料
車の燃料であるガソリンと電気はどのような流れで作られて車を動かすに至っているのでしょうか。
ガソリンの場合
- 油田
- 精製工場
- ガソリンスタンド
- 車へ給油
- 走行
電気の場合
- 化石燃料
- 火力発電所
- 送電網
- 車へ給電
- 走行
このように電気を火力発電で作る場合に、化石燃料を燃やしてその火力で電気を作っているために走っている間はエコなのですが、全体でみると全くエコではなく、燃料まで考えると期待されるほどエコではなく、それならわざわざ施設などにお金や資源を割かずにガソリン車のままで良いという事です。
火力発電の割合
現在日本の電力割合*¹(2023年)は
- 火力発電:68.6%
- 再生可能エネルギー:22.9%
(太陽光、水力、バイオマス、風力など) - 原子力発電:8.5%
このように電力の7割を火力発電に依存しています。この状況下では、電気自動車が増えても火力発電所の稼働が増えることになり、排気ガスの減少は限定的になります。かといって、太陽光発電を急激に増やそうとしても、土地を森林伐採する必要があり、土砂災害や環境破壊につながる可能性も高まります。電気自動車の性能を発揮させるためには、フランスのように原子力発電を主要電源とするなど、電源構成の大改革が不可欠なのです。
まとめ
「電気自動車は走行中に排気ガスを出さないからエコ」という情報は、一部の側面を切り取ったものに過ぎません。その電気がどのように作られているかまで視野を広げ全体を見ると、エネルギー構造の課題が見えてくると思います。
全てが電気自動車になることが理想ですが、それまでの課題は電力であったり、今回の記事では割愛しましたが充電する場所だったり様々な課題があります。何が必要で何が必要か一つ一つ吟味してよい社会を作れればと日に日に思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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参考文献
*1:経済産業省令和5年度(2023年度)エネルギー需給実績https://www.meti.go.jp/press/2024/11/20241122001/20241122001.html


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