【料理の科学】コールドスタート とホットスタートの違い

ラボ

料理を作る際にこんな言葉を聞いたり、見たことはありませんか?

  • ホットスタート:フライパンを火にかけて温めてから食材を入れる
  • コールドスタート:食材をフライパンに乗せてから火にかける

これをレシピ本やYouTubeで見ても今までは「なんで使い分けているんだろう?」
そんな疑問でいっぱいでした。

実際、どちらを使えば美味しく仕上がるのでしょうか?

この記事では、この2つの調理法の違いを熱の伝わり方と化学反応という科学的な視点から、
どのような違いがあるのかを明らかにします。

結論を先に言うと「どちらが優れているか」ではなく「何を作りたいか」で使い分けるのが正解です。

熱の伝わり方の違い

ここは物理の話になってしまうので、数式を見たくないという方はこのイメージで大丈夫です!

ホットスタートはすぐに熱が入るので、外側がカリッと焼ける」
コールドスタートは熱がじんわりと内部まで加熱される」というイメージです。

実際のフライパンは中心と端で温度分布が異なりますが、ここでは理解を容易にするため、平均的な表面温度を一定と仮定します。

熱は「温度差が大きいほど速く流れる」ことはフーリエの法則で説明され、

q = -\lambda \frac{dT}{dx}

q:熱流束(W/m²) , λ:熱伝導率(W/(m・K)) ,  dT/dx:温度勾配(K/m)

この式の意味として「熱は温度が高い方から低い方へ、その温度差が大きいほど、そして物質が熱を伝えやすいほど、たくさん流れる」という事です。

ただし実際の調理では、時間とともに温度が内部に広がっていく「非定常伝熱」であり、
表面温度の変化速度が内部の温度上昇を決定します。

ホットスタート

フライパン表面温度が高く、食材は冷たい → 温度の幅dTが大きい。
そのため、熱が一気に表面に流れるため表面と内部の温度差が大きくなります
そのため結果として表面は過熱されるが、内側がまだ冷たいこんな状態になってしまいます。

コールドスタート

フライパンと食材が同時に温まる→温度の幅dTは小さい。
そのため、時間をかけて均一に温まることができ表面と内部の温度差が小さくなります
結果として、表面と内側で温度差がちいさく、全体として温度がじんわりと上がます。

化学反応

メイラード反応

メイラード反応とはアミノ酸と還元糖が120°C〜165°Cくらいで反応して、
強い焼き色と香ばしい香りが出ることを指します。
これはホットスタートでの効果が大きく、コールドスタートではあまり見られません
(理由として、メイラード反応は食品の表面が水分で覆われていると起きにくいので、ホットスタートで起きやすく、コールドスタートでは起きにくいです)

ホットスタートでの影響:表面が一瞬で高温になれば、短時間でメイラード反応が起き、
強い焼き色と香ばしい香りが出ます。

レンダリング

脂肪が温まって溶け、低温でゆっくりと香り成分や旨味を抽出することで、
中はジューシー、皮はパリッとした触感になる。
これは、ホットスタートでは脂肪が解けるより前に表面が焼けてしまうため、コールドスタートで見られやすい反応です。

コールドスタートでの影響:時間をかけて脂がじわじわ溶け出し、自分の出した油で揚がるような状態になる。

タンパク質の変性

タンパク質の変性は、温度帯ごとに段階的に起き、柔らかく、ジューシーになります。
コールドスタートでの影響:低温帯で長い時間火にかけるため、結果的に柔らかく、ジューシーになる。

結論:食材によって異なった料理法

ホットスタートが適している料理

まとめるとホットスタートは、強火で熱したフライパンで表面焼き、メイラード反応を最大限に引き出し、香ばしくて中はジューシーという状態を作り出せる調理法なので、
焼き目をつけ、旨味を閉じ込めたいこんな料理に適しています。
(例:ステーキ、ハンバーグなど)

コールドスタートが適している料理

まとめるとコールドスタートは、食材の油を溶かし、レンダリングでうまみを抽出し、たんぱく質の変形で中は柔らかく、外はパリッとした状態を作り出せる調理法なので、
じっくり火を通し、素材の脂や香りを最大限に引き出したいこんな料理に適しています。
(例:チキンステーキ、ベーコンなど)

どちらが優れているというわけではなく、作りたい料理や目指す食感によって、最適な手段を使い分けることこそが「一番おいしく仕上がる方法」というわけです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
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参照

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