東京一極集中はなぜ起こるのか?

分析

「東京は人が多い」東京に来れば誰もが人の多さを痛感するでしょう。それもそのはずで、日本の首都である東京都には、政治・経済・流行の中心であることで多くの人が集まり、東京一極集中になっているといわれています。

実際、世界を見渡してみると多くの先進国では都市の役割が分散しており、「一つの都市が国の機能を担う」このような現象は珍しいことです。

この東京一極集中がなぜ起こったのかを地理的要因、歴史要因、宗教的要因に分けて考えてみます。

一極集中とは?

一極集中を考えるために今回二つの量を定義します。

集中率 = \frac{首都圏の人口}{国の総人口}
Primate指数=\frac{第1都市圏の人口}{第2都市圏の人口​}

この定義を用いて、GDP上位の先進国である(G7と主要国)を対象にデータを分析します。今回のデータの首都圏や第1首都圏また第2首都圏はすべてhttps://www.citypopulation.de/の主要都市から引用することとします。

注意すべきこととして、この主要都市から引用すると東京は東京23区となり、神奈川ではなく横浜市となっていることから他国でも同じような行政区で分けられている可能性があるため、日本の第2都市圏は横浜市とします。また、国勢調査のデータがない場合は推定値とします。

対象国

G7

主要国

このようなデータから、それぞれの国の集中率とprimate指数を表します。

日本は本当に一極集中なのか?

G7および主要国を対象にprimate指数を算出(*参照)して、二つの分類に分けると以下のようになる。ここで、指数が2未満なら分散型、2以上なら集中型とした。

  • 分散型:アメリカ、ドイツ、カナダ、オーストラリア etc…
  • 集中型:イギリス、フランス、韓国、日本 etc…

日本の場合、東京23区と横浜市を比較すると指数は約3.8となり、集中型グループの中でも上位に位置する。ただし、イギリスのような極端な外れ値ではなく、集中型国家の一つと言えるのではないか。

しかし、日本に住んでいる人であれば、「横浜が第2都市」という扱いに違和感を覚えるだろう。実際、横浜は東京の外延に広がる大都市圏の一部であり、機能的には首都圏と同様であることから、この点を考慮し再計算する。

  • 第1都市圏:関東大都市圏(約4,300万人)
  • 第2都市圏:近畿大都市圏(約2,200万人)
  • 日本の総人口:約1億2,600万人

このとき、集中率は約34%となり、フランスや中国と同水準に上昇する。一方、primate指数は約1.95となり、東京は一極集中国家とはいいがたい。

そのため、「東京一極国家」なのではなく、関東圏という巨大都市圏を形成した国家なのである。にもかかわらず体感的には一極集中に見えるのは、人口分布ではなく、政治・行政・情報・経済といった国家中枢機能が東京都心部に強く集中しているためである。そのため、多くの人が東京に移動することが多く、関東近郊がベッドタウン的働きをしている。

なぜ人は東京へ移動するのか

移動の意思決定は、次の式で表す事が出来る。

移動の決断 = 吸引力 − 抵抗力

この式は、Lee(1966)の Push–Pull モデル*2に基づく単純化である。重要なのは、東京の吸引力自体は他国の都市と本質的に同等である点である。日本の特徴は、国家中枢機能が東京都心部に強く集中していることである。地方を離れることへの抵抗力が相対的に低い点にある。

なぜ、地方を離れることへの抵抗力が低いのだろうか?その点を地理的条件、歴史的条件、宗教的条件の三点から考えてみる。

地理的条件

第1都市と第2都市の距離が短く、かつ土地がこれ以上広げられない場所ほど、都市機能は統合されやすいというのは今までのデータでも言われてきたことで、実際に以下のようなデータからも現れている。

  • 東京–大阪:約500km
  • NY–LA:約3,900km
  • 北京–上海:約1,200km

また 1964 年に東海道新幹線が開業し、新横浜駅が設置されたことで、東京と横浜間の移動時間は大幅に短縮され、この結果として通勤・商業圏としての一体化が進んだことが東京一極集中の一因だと考えられる。

ただ、横浜は独立した第2都市ではなく、東京を中心とする関東大都市圏の一部と考えたほうが分かりやすく、たとえ東京に住んでいなくても、関東にいれば新幹線や電車などの移動手段も豊富なため、こういった要因が移住の抵抗力を下げている一つの要因と考えられる。

歴史的条件

Max Weber の『都市の類型学』*3 では、地方への定着意識はその土地における歴史的経験に依存するといい、特に欧州では小さい国が多いが、一極集中していない理由が歴史的条件にある要因が大きいと考えています。

欧州と日本の歴史を振り返ることで見えてきます。

欧州

中世では、戦争の際には市民自身が武器を持って、戦うことでその土地への帰属意識が生まれ、また、要塞の中で生活はすべて事足りてしまうため、他の土地に赴くことなく一生を終えることもあったということからも分かるように、市民たちにとって都市は「国家から独立した、自分たち自身のもの」だったのです。

日本

一方、日本では16世紀以降の刀狩・兵農分離により、日本では武装と防衛が国家に独占されたことで、地域社会は「農民たちが自ら守る土地」ではなく、「中央に委ねるもの」として再編されたことで、帰属意識や土地に対する愛着がなくなっていった。さらに、参勤交代により江戸の中央集権化が進み、それが戦後の太平洋ベルトによる産業の集中につながった。

宗教的条件

Ferdinand Tönnies のいう共同体(ゲマインシャフト)は、地縁や文化に強く結びつく社会形態である。このような社会では、結果として人の移動が抑制される傾向があると解釈できる。これが東京の一極集中を生んでいることの一因ではないか。

日本の神道・仏教では、神は分霊(ぶんれい)・勧請(かんじょう)によって別の土地で祀る事が出来、ご先祖様も位牌(いはい)・仏壇(ぶつだん)として、特定の土地に縛られることなく、神様やご先祖様とのつながりが途切れないシステムが古くから出来上がっていた。

この制度的特性により、日本では移住による抵抗力が古くから希薄であったことが考えられる。

結論 

東京一極集中は、地方の衰退という単純な話ではなく、日本社会の構造が、歴史と風土から生まれた偶然の産物なのである。
しかし、人口減少と災害リスクに直面するこれからの日本において、歴史が導いてきた答えは正解だったのか?中央集権的なつくりではなく、災害大国であるならば分散した地方分権性にした社会を目指すべきなのか?これはこれからの人間が考えることであるため、一人一人が意見を持ち行動することが重要になると思う。その際にこの記事がこの問題に少しでも役に立てればいいとおもう。

参照

*1 UN Data Portal:https://population.un.org/dataportal/home
*2 push pull model:https://de.wikipedia.org/wiki/Push-Pull-Modell_der_Migration
*3 Max Weber:都市の類型学

*4 Ferdinand Tönnies:ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

データ(G7)

ここではG7の集中率は小数第1位まで、primate指数については小数第2位まで表します。これは、primate指数のほうがそれぞれの都市の人口が近い数字のため、数の大きさを比較しやすくするためです。

集中率

アメリカ37.6
ドイツ23.0
イギリス7.6
フランス31.2
イタリア21.5
カナダ6.55
日本13.0

primate指数

アメリカ2.26
ドイツ1.99
イギリス7.83
フランス2.41
イタリア2.04
カナダ1.54
日本2.58

データ(主要国)

また、他の主要国の集中率とprimate指数は、以下のようになります。

集中率

韓国5.4
オーストラリア5.3
スペイン14.5
オランダ15.4
中国64.4
ブラジル17.8
ロシア11.1
メキシコ14.2

primate指数

韓国2.86
オーストラリア1.00
スペイン2.01
オランダ1.31
中国1.16
ブラジル1.84
ロシア2.32
メキシコ4.88

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